右手に剣を、左手に君を
「だけど、怖がるの、やめたの。
怖いけど、もっと、怖いものができちゃった」
「もっと怖いもの?」
「……皆が、傷ついたりする事……」
渚は、そう一言、だがしっかりと言った。
「死んだ人の思惑を探ったって、しょうがない。
私が守りたいのは、今生きてる皆なの。
生きてる皆の方が、大事なの。
私、がんばるから……。
これからも、よろしくお願いします」
渚は、正座したまま、深々と頭を下げた。
俺達は面食らい、顔を見合わせた。
「ちょ、やめろよー」
「そうだ。頼まれずとも、共に戦うつもりだ」
健太郎と雅が、珍しく慌てて話す。
「……顔を上げろよ、渚」
肩をたたいて言ってやると、渚はやっと顔を上げた。
その顔は泣いていなかったので、俺達は少しホッとする。
彼女はまだ、泣くのをなんとかこらえていた。
……こいつは、ヘタレなんかじゃない。
「ありがとう、渚。
皆で、がんばろうな」
そう言うと、やっと。
渚は、ふにゃーと笑って、少しだけ泣いた。
俺は、その小さな身体を黙って抱き寄せて。
雅も健太郎も、冷やかさずにそれを見守っていた。
これが……俺達が、やっと仲間になれた瞬間だった。