右手に剣を、左手に君を
予鈴が鳴った。
昼休みももう終わる。
俺達はノロノロと教室へ戻る。
その途中……。
俺は異変に気付いた。
「渚」
「うん?」
「最近、くっつかなくなったな」
最初はとにかくぷるぷる震えて、必ず誰かにくっついていたのに。
最近は、渚は一人、手ぶらで歩いている。
「あっ、そーだね。
寂しかった?
しょうがないなぁ」
渚はそう言うと、突然腕に巻きついていた。
柔らかな感触が、布越しに伝わってくる。
「べ、別にっ、そういうわけじゃ」
「コウ、素直に甘えとけ」
「アホ!」
恥ずかしさで慌てていると、渚はふと腕を離した。
「……自分で歩かなきゃね」
ぽつりとつぶやくと、ポテポテと一人で数歩先を歩きだした。
俺達三人は、顔を見合わせる。
……あれは、絶対無理してるよな……。
全員の顔にそう書いてあった。
どうしたものか。
ぼんやり考えながら歩いていたら、ちょうど通りかかった教室から。
甲高い悲鳴が聞こえた。