右手に剣を、左手に君を
健太郎は、背は小さいが態度はでかい。
小さいと言っても、165cmだが。
180cmの雅や175cmの俺よりは、確実にちっこい。
しかし、そんな事を感じさせない大らかさと、大きな猫目で人を惹き付ける。
そんなやつだ。
「あー……。
あっ、そうだ!
キスはどうっすか?」
「……キス?」
「そーっす!
眠ってるお姫様を起こすのは、王子様のキスだと、相場が決まってます!」
何の相場だ、バカバカしい。
しかし、健太郎の冗談にばあちゃんはケラケラと笑った。
「良いじゃないか、そういう洒落た答、私は好きだよ。
誰かやってみな」
「はぁっ!?」
俺達は、顔を見合わせる。
「じゃあ、言い出しっぺの健太郎が……」
と、俺。
「いやいや、王子様っつったら雅だろ」
と、健太郎。
「この場合、御津家の子孫の恒一が適任だ」
と、雅。
全員、どんな美少女であろうと、龍神の姫にそんな事をできるほど、バカじゃない。
何が起こるか、わからないのだから。
譲り合っていると、ばあちゃんが口を挟んだ。
「男らしくない奴等だね!
恒一!御津家の子孫としての意地を見せてみな!」
「そーだそーだ!」
「うむ、ババ様が正しい」
「お前ら、ひどくないか!?」
他人事だと思って、完全に面白がってるだろ。
おとぎ話じゃないんだから……。
しかし、反論は許されず。
俺は無理矢理、龍神の姫の前に、連れていかれた。