右手に剣を、左手に君を



「どーした!?」



考えるより先に、健太郎が教室に入っていった。


その教室は、隣のクラスだった。


人だかりができていて、それを掻き分けると。


真ん中に、男子生徒が一人、倒れていた。



「どうしたんだ?!」


「わからないの。
いきなり倒れちゃって……」



渚が俺の横から、床に膝をつく。


手をかざし、様子を見るふりで回復させようというのだろう。


しかしすぐに。


渚は「あっ」という顔で、目を見開いた。


それは俺も雅も健太郎も一緒だった。


倒れた男子生徒の開いた口から。


青白い光の玉が、ぽこ、と顔をのぞかせたのだ。


渚はとっさにそれを口に押し戻そうとするが、遅かった。


光の玉は空中にフワリと浮き、教室の壁を通って廊下に出ていってしまう。


もちろん、他の生徒には見えていないようだ。


俺達4人は教室から出て、光の玉を追う。



「待て……っ!」



しかし光の玉は、廊下の壁も通って。


どこかへ、消えてしまった。


慌てて窓を開けるが、それはどこにも見えない。



「……今のって……」



渚を見る。


彼女は空を見て、青ざめていた。



「人間の、あの子の魂……」


「魂!?」


「そんな……」



渚の答えに、健太郎も雅も絶句する。



「かすかだけど、妖気が漂ってる」


「妖の仕業なのか」


「多分」



話すうちに、教室に先生達が来て。


男子生徒は救急車で病院に運ばれていった。


周りは騒然としていた。


とうとう学校で、あの原因不明の病で倒れる者が出た。



それは俺達生徒にとって……。


かなり、ショックな出来事だった。


次は自分かもしれない。


誰もが、そんな不安を抱えていた。



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