右手に剣を、左手に君を
「良いよ、健太郎。
行こう」
俺は健太郎の背を押し、教室を出た。
雅と渚が後ろをついてくる。
「何だよあいつら!」
「……誰もが不安なんだ。
それだけ、解決を急がなければ」
興奮した健太郎を、雅がなだめる。
俺は……。
何と言っていいか、わからなかった。
神社の息子。
そう言われたのは、何年ぶりだろう。
普段は好奇の目で見るくせに、何かあれば責められる。
胸のモヤモヤが止められず、思わず奥歯を噛みしめた。
すると、ふと、左手に温かさを感じて。
奥歯を離した。
渚が、勝手に手を繋いでいたのだ。
何も言わずに。
その優しい温かさが。
何故か、涙腺を刺激した。
あぁ。
俺だって、不安なんだ。
あふれてにじんだそれが、こぼれ落ちないように。
灰色の空を、きつくにらみつけた。