右手に剣を、左手に君を


呼吸が乱れる。


とにかく裏庭についた。


人影は、焼却炉の陰になって、見えない。


俺は忍び足で近づき、様子をうかがうことにした。



「……えっと……つきあうって、何にですか?」



渚の鈴の音のような声が聞こえてくる。


その声は、緊張しているのか、少し震えていた。



「だから、野田とつきあってやってほしいんだ」



尾野の低い声が聞こえてくる。


なんだって?


野田とつきあえ?


なんで尾野が、そんな事を言うんだ?



「ええと……」



現代の『つきあう』の意味がわからない渚は、困った声を出した。


なかなか答えない渚に、尾野が言葉を補足する。



「恋人になってやってほしいんだよ。

わかるだろ?」


「ええっ!?なんで!?」



かろうじて『恋人』のニュアンスは通じたらしい。


じゃ、ない!!



「野田が、キミの事が好きなんだそうだ。

可愛らしいから」


「か、可愛い……」


こらこら、喜ぶんじゃない!!


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