†魔界戦記†
なぜかいつもより
カエンが少し大人びて見えた。

そよ風が、静寂を
断ち切るかのように
辺りに吹き抜ける。


「お前に言うコトなんか
1つもねぇよ」


冷たい冷たい
まるで刃物のような言葉が
今、私の胸を突き刺す。


「ちょっと、ルシファー!!
なんとか言いなさいよ
なぜ魔族になんか・・・」


「・・・・・・」


「だんまりってワケ?
いいわ、力ずくで聞く・・・」


グッと腕に重みがかかる
不思議になって横を見ると

なんと腕を掴んでいたのは
あのミストだった。


「ミスト!!何してるの!?
カエン君、行っちゃうのよ
なんで止めないの?」


一言一言浴びせるたびに
ミストの目から雫が落ちる。

なんでこの子は・・・


「ハピエル・・・」


ルシファーの声に
我に返って戦闘体勢をとる。


「すまない」


意外だった。

生まれてこのかた
コイツに謝られたコトなんて
一度もなかったのに・・・

それはどんな説明よりも
事の重大さを表していた。


「はぁ、体には気をつけてよね」


そう言うと、ミストを置いて
さっさと帰ってしまうハピエル

それとほぼ同時に
ルシファーも先へと進む。




残されたのは、二人だけ・・・
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