†魔界戦記†
このままじゃ
カエンは行ってしまう。

でも、止めるコトなんて・・・


「できないよ」


言葉が口から漏れる。


カエンも私を
じっと見据えたまま
何も語ろうとはしない。

私はまた
涙が込み上げてくるのを感じた。

自分では涙が溢れ出すのを
止められない

カエンのコトも・・・


いつの間にか目の前に
カエンがいるコトに気が付いた。

さっきまでは
かなり離れた所にいたのに・・・

そしてギュッと
私の手を握りしめる。


「これって・・・」


それは幼い時、両親が
事故で亡くなって
いつも泣いてた私に
カエンがしてくれたコトだった。


「覚えてたんだ?」


少しいつものカエンに戻って
ホッとしたのか
すんなりと言葉が出てくる。

けど、カエンは相変わらず
険しい表情で私を見つめていた。


「カエン、私も行くよ
私も魔族になる・・・
たとえカエンの目的が何であれ
ついていくから!!」


これは、私なりの選択だった。

もとの世界に戻りたいと
何度考えたコトか・・・

でも、それは戻りかたによる

ハゼル、セイト、トード
そして、カエン

みんなと一緒に帰れないなら
みんなと離れる位なら
ここにいた方がずっとマシだ。


それに・・・
私は、カエンのコトが・・・


急に、体が引き寄せられる。

はっきりとは思い出せないけど

あの時、きっと・・・



























きっと、キスしたんだ。


あの寂しくて
それでいて優しい感触は
今でも忘れられない。


「ありがとう・・・ごめんな」


首筋に衝撃が走り
意識が遠くなっていく。

薄れゆく意識の中で
私は静かにカエンに
別れを告げた。
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