†魔界戦記†

「ほう、一端の人間風情が
良く立てましたね」


ハゼル達も驚きが隠せないのか
こっちを向いたまま
動きを見せない。


「俺は、そんなお前に
居場所を見つけた・・・
惹かれたんだ!!
行かせやしないさ」


もはや体力が無いのは
百も承知だった。

動けない体に鞭を打って
俺はカエンに借りを返す。


「・・・けよ」


「聞こえなかったが?」


「・・・けよって言ってんだよ」


「?」


「どけよーーーーッ!!!」


全体力を使って
男に体当たりを仕掛ける。

それに呼応するように
トードの手を引き
飛び出すハゼル


「待て!!」


しかし、動けない。

これが先程まで
半死半生だった男の力なのか?

いや、違う。

これは全くの別人だ。


「ひゃははは
おい、少し遊ばないか?」


この細腕からにしては
強すぎる腕力

そしてこの喋り方といい・・・


「二重・・・人格か」


引きつった男の顔

最初は周囲の反応も
みんな一緒だった。

これは、俺の『在りたい自分』

カエンを見て想像した
何もかも素である俺だ。

俺はそう考えるようになった。

暴走すると、手のつけられない俺

そんな俺でも
受け入れてくれたアイツら


「さすがに限界のようだな」


とうとう
引き剥がされてしまった。

木の根本に寄りかかるコトしか
今の自分には出来そうにない。


「言い残すコトは?」


ぱくぱくと口を小さく動かす
聞こえない様子で
少しだけ顔を寄せてきた。

残したい言葉なんてなかった
まだ生きるから・・・
アイツらと、一緒に

強いて言うなら一つだけ


「ありがとよ」


男は何故か少しだけ
哀しい表情をとった後
俺に手をかざした。


「そうか、さらばだ」


見えない何かが近づいてくる。

終わっ・・・た・・・



あれ?



生きてる、よな?


「まだ、死ぬんやないで」
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