†魔界戦記†


【威渦槌】

ハゼルが見せる
初めての創術だった。

手に現れたのは巨大なハンマー
山一つえぐり取れるような
圧力を放っている。


そしてトードのもとに移動すると
その頬をひっぱたいた。

だが、彼の目に生気は戻らない。


「何してんだよ・・・」


怒りで肩が震えてくる
悔しくて悔しくてたまらない。


「なんでここまでして
お前を行かせようとするか
わからないのか!?」


俺の心の叫びが
そのまま口を伝って出てくる。


「俺じゃダメなんだよ!!
お前じゃなきゃ・・・
カエンは戻ってこないんだ


























目ぇ覚ましやがれ!!!」


パリーン


何かが粉々に
砕け散った音が聞こえた。
威渦槌が、砕かれた?


「・・・終わった・・・」


「まだ終わってないよ」


トードが一歩前に進みでる。


「やっと、かよ」


威渦槌が
砕かれたわけじゃなかった
あれはトードの心を
縛っていた鎖が
破れて外れる音だったんだ。


「ごめん・・・」


顔の前で両手を合わせて
泣きそうな顔をする。

よかった・・・

いつものトードだ。


「さぁ二人で倒すよ
いくよ、ハゼル!!」


時間稼ぎが目的らしく
女は俺達の話していた間
何もしてこなかったが
今は周りの景色が
歪むほどの妖気を
辺りに放っていた。


やはり・・・


ドンッ


気が付けば俺はトードを
突き飛ばしていた。
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