†魔界戦記†
悪魔の片鱗
「か、刀の人・・・」
まだ痛みの残る
右腕を抱えながら
立ち上がるカエン。
すると
ガスッ!!
鈍い音をたてて
後頭部に衝撃が走る。
「わざとか?」
無防備なところを
殴られたので
そのダメージは大きく
熱く火照るたんこぶを
両手で押さえ
もう一度地面に
うずくまってしまった。
「る、ルシファー
俺だけでも・・・
俺だけでも、勝てたって!!」
素直にお礼を
言おうとするが
口は全く違う言葉を
吐いてしまう。
そんなコトはどうでもいい
というように
ルシファーは問い詰める。
「貴様、刀は使ったか?」
ハッ、と気づいて
腰に両手をあてる。
冷たい鉄の感触・・・
そこには以前
ルシファーに渡されていた
双振りの刀があった。
「ふぅ、やはりな・・・
お前の戦い方では
これ以上生き残るコトは
不可能だ」
憐れみの眼差し。
いや、そう言えば
少しは楽かもしれない。
死の宣告。
カエンが受けたのは
まさにそれであった。
「俺・・・が・・・?
・・・上等だ
さっきの相手は
炎が効かなかっただけ
てめーの五感で
確かめてみろ!!」
「貴様ごときでは
触れるどころか
近づく事すらできぬ」
カチン
瞬時にルシファーの背後に
現れるカエン
その手はすでに
炎を纏っている。
「口だけか、天使サマ?」
【黒焔】
確実に黒紅の炎は
相手を呑み込んだはず
しかしカエンの
目に映る光景は
彼にはにわかに
信じがたいものだった。
「どうした・・・」
黒焔を振り払い
それと同時に斬りつける。
「ぐわぁぁぁッ!!」
刀をゆっくりと
鞘に納めるルシファー。
カエンはここにきて
2度目の負けを経験した。