†魔界戦記†
「この感じ・・・
まさか、カエン?」
額の汗を拭い
修行を中断するハゼル。
「時間は待ってはくれん
ボヤボヤしている
暇などない事を知れ」
すかさずそれを
叱りつけるグラドリエル。
そう、時間は
待ってはくれない。
ハゼルの目つきが変わる。
すでに昔の焦っていた彼は
どこにもいなかった。
キィィィィィ
音を立てて
魔界植物が枯れていく。
「なんで!?
しかもこの魔力は・・・」
「強大な炎の妖気・・・
のようじゃのぉ」
被っている帽子が
風圧で飛ばされぬよう
片手で押さえながら
サキエルが言う。
どうやら鼻に
砂が詰まったようで
うまく喋れないようだ。
セイトはちょっと
笑ってしまった。
「魔界植物はのぉ〜
一定以上の炎の妖気を
浴びると枯れるんじゃ
しかしこの妖気は
普通じゃないのぉ〜」
すっかり干からびた
自分の植物を見下ろし
肌で感じている
この魔力が
誰のものなのかを
確認するように呟く。
「・・・カエン」
今宵は満月だ。
月が美しく辺りを照らす。
それは覆っていた雲を
魔力の波が吹き飛ばして
しまったからであった。
「早く戦いたい・・・
なんで君はこんなに
僕を楽しませて
くれるんだろうか?」
憂いの残る微笑を浮かべ
ヒスイは一人
遠くを眺めていた・・・。