†魔界戦記†
「ラセン・・・」
今日の試合も終了し
それぞれの宿へ
帰ってゆく選手たち
未だに元気のないラセンをカンナは呼び止めた。
「カンナか、ワイは疲れた
今日は・・・休むわ」
そう言うと
素っ気ない態度で
歩いていくラセン
「ラセン!!
くよくよするなんて
あんたらしくないよ
何があったか
知らないけど・・・」
「黙れ」
かきけされる言葉。
「何がわかんねん?
俺は俺を慕ってくれた
小さなダチを見殺しにした
それ以上でも
以下でもないわい」
そしてうつむき
何も、話さなくなった。
その夜
「カンナ、起きてるか?
ベランダにおるさかい
はよう来いや」
カンナはあれから
随分へこんだらしい
あの陽気さは消え
頬には涙の後があった。
「悪かったな、怒鳴って
アイツは・・・
カンユは俺がこっちにきて
初めて会った奴やった」
「え?最初は
私じゃなかったの!?」
パチン
蚊に刺された腕を
さすりつつ
ラセンは続ける。
「カンナは2番目や
アイツはホントに
弱っちぃ奴でな
俺が守ったらな
一人で夜、トイレにも
行けんガキやった」
あっはっはと
一人で大笑いするラセン。
ツラさを隠して
押し込めているのが
痛いほどわかる
カンユであった。
「俺は根っからの
戦闘マニアや
どつきあいが好きで好きで
仕方ない男や・・・
俺の傍にはおけんやろ
やから、やから・・・」
まえのめりにかがんで
言葉をつまらせてしまう。
そんなラセンに
カンナはそっと背を向ける。
「背中、貸すわよ
今日だけね」
その夜
死神のすすり泣く声が
何度も何度も
まるで天に
謝罪するかのように
虚しく響いていた。