図書室から始まる彼女の初恋
私はこれまでこんなに早く走ったことがないんじゃないかというくらい、
走って帰宅した。
「お姉ちゃん!」
帰るなり、
姉の部屋をノックもなしに入る私。
「んん…何い?
まだ仕事の時間じゃないじゃん――」
ベッドの上でスヤスヤと
眠っていたお姉ちゃんには
悪いなと思いつつ叩き起こす。
「現キャバ嬢のお姉様にお願いします…
お…オシャレというものを教えてください!」
お姉ちゃんは、二十歳だ。
そして、
その中でもトップに入る可愛さで、
世のおやじ達を支配している。
「彼氏でもできたのお?」
「そんなのじゃないけど…私、可愛くなりたくて…」
「アンタねー…綺麗な顔立ちしてるのにどんどん暗くなっていって…
あたしもアンタみたいな容姿が良かったわ。
私は童顔だけどアンタは美人。
その気になればすぐにフェロモン、ムンムンの小悪魔にでも
変身できるわよ?」
フェ…フェロモン…
そんなのは別にいらないけど…
お姉ちゃんは私をジーッと見つめ、
思い立ったようにベッドから出てきて立ち上がった。
「中学生の頃。
あたしがアンタがダサいこと教えても、
聞く耳もたなかったのに、何よ今更…」
お姉ちゃんは
ブツブツ独り言をつぶやきながら、
タンスを探り始めた。
「あー、あったあった。
はい、これ。」