図書室から始まる彼女の初恋


梨香さんに借りた雑誌で研究していると突然激しく扉が開いた。

「…はあっはあ…」

走ってきたのかな?

息切れしている。

……それにしても、男の人なのに。

綺麗な人。

肌は色素が薄く真っ白。

目は何もかも見透かすような茶色っぽい瞳。

制服のシャツを第二ボタンまで外していて、そこからちらりと筋肉質な胸板が見えている。

「タオルない?」

これは営業スマイルというやつかな。

今まで男の人に興味なかったから、
早々簡単にはかっこいいとは思わない。

まあこの人はかっこいいというより、
綺麗が当てはまるけど。

「ありません。」

「他に人は?」

「いません。」

何なのこの人。

図書室に用がないんだったら、
さっさと帰ればいいのに。

「…良かった。
しかもそこにいたのが君で。」

どういう意味?

「俺のこと知らないでしょ?
俺を見てそんなに冷静でいられる人初めて見た。」

よくわからない。

だけど目の前でクスクス笑う彼に見とれてしまう。

「ご用件は。」

「…?」

「図書室に来たんですから、本を読むんでしょう?
…あの、何を探してるんですか?」

再び笑い始める彼。

変な人。

彼の第一印象は変な人。

「もう、大丈夫かな。
俺、そろそろ行くよ。
…あ、学年と名前は?」

「…高原 桃奈。一年です。」

学年と名前なんて聞いて、
どうするんだろう。

「俺は二年の芦田 啓(あしだ けい)。
かくまってくれてありがとう。」

彼は香水の甘い香りを残して図書室を出て行った。
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