図書室から始まる彼女の初恋
「梨香さん、
髪巻いてみたんですけど、おかしくない?」
この日も私と梨香さんは、
図書室でしんみりと過ごしていた。
「綺麗に巻けてるよー♪」
ドドドドド…ッ
と、その瞬間大きな足音が図書室に近づいてくる。
私と梨香さんは顔を見合わせ、
思わず身構える。
…ガラッ…!
あ。
この人。
この前の芦田 啓と名乗った、綺麗な人。
「はあっ…はあ…。タオルない?」
また彼は営業スマイルを浮かべてる。
「ありません。」
梨香さんの方にちらりと目をやると、
梨香さんはなぜかあわてた表情だ。
「そんなこと言わないで。ほら。
女の子なんだからハンカチくらい持ってるでしょう、桃奈?」
…名前覚えられてるし…。
そりゃ、私も覚えてるけど。
「あなたに貸すようなハンカチ持ってません。」
「相変わらず揺るがないねー。
俺、一応先輩なんだけどなあ。」
…あ、そうだった。
私てっきり…。
「すみません。
…でも、本当のことですから…」
彼の瞳に見つめられ、
居てもたっても居られなくなり、私は思わず目をそらす。
「ねえ、啓って呼んでよ。」
急に何よ…
「嫌です…」
「それと敬語はやめてよ。」
一応先輩なんだけどなあって
言ってたのは誰よ…!
「あ。見ぃつけた♪」
彼がニヤリと笑ったと思えば、
気が付けばポケットにあった携帯を取られていた。
なにやら操作をし始める彼。
「…やっ、止めてくださいっ。
何してるんですか。」
「あはは、ごめんごめん。どうぞ。」
何をしていたんだろう。
「何いじったんですか?」
「別にー?何もしてないよ?」
怪しい、世界一信じ難い人!
「あの…」
そしてずっと黙っていた、梨香さんが口を開く。
「これ、良かったら…」
ハンドタオルをおずおずと差し出す梨香さんは、
ほんのり頬を染めてとても可愛かった。