図書室から始まる彼女の初恋
私は気が聞いたセリフを何一つ言えず、
梨香さんは「今日はもう帰るね。」と
赤く腫らした目で小さく微笑んで帰って行った。
全部…彼のせいじゃん…!
ん…?
私はなにやら暗くなっている窓を覗き込んだ。
やっぱり。
雨降ってるし…。
梨香さんが帰ったときは
降ってなかったのに。
私って、雨女なのかな…。
傘ないし、
ひどくならないうちに帰ろうっと。
プルルルル♪
「携帯…?」
ここ最近、
だいぶアドレス長に登録した名前も増えた。
誰からだろう…
あれ、知らない番号。
『もしもし』
私は反射的に出てしまった。
『あ?桃奈♪』
その声は
私の耳にストンと響く。
間違いもなく彼だった。
もしかしてさっきの短時間で赤外線交換でもしたの!?
『何ですか。』
『普通はもっと喜ぶよー?
俺のプライベート知れてさ。』
『別に興味ありません。』
男の人の前ではつい控えめになってしまう私なのに、
彼の前ではつい自分を出してしまう。
『…あああ!』
私は窓の外を見て、
思わず叫んでしまった。
『大雨だ…』
電話越しにクスリと笑う彼。
『迎えに行くよ。
レディ一人じゃ危ないよ?』
これで帰れば、
制服のシャツが透けてしまう。
『はあ…わかりました。
お願いします。』
私は言い終わった後、
ブチッと通話を切った。
本当に迎えに来てくれるんだろうか。
せめて、20分は待ってみようかな。
20分だけね。