図書室から始まる彼女の初恋


「あなた、一年生?
図書委員なの?」

先輩はうつむく私を
覗き込むように見つめる。

「…はい」

そういうと、
無愛想な私にも関わらずニコリと微笑む。

「私、星成 梨香(ほしなり りか)!
よろしくね。」

「えっと…高原 桃奈です。
よろしくお願いします。」

敬語に馴れない私。

中学でも高校でも
帰宅部の私は上下関係というものを詳しく知らない。

部活に入っても、
どうせ馴染めないし。

「桃奈って呼んでも良いかなあ…?」

「はい。」

「じゃぁ、
梨香って呼んでね。」

…?

“先輩”は付けるべき?

梨香って呼んじゃって
良いのかな…

「…梨香…さん。」

やっぱり呼び捨ては
気が引ける。

「なあに?」

「図書委員って他にはいないんですか…?」

図書委員どころか本を読む人さえいないけど。

「うーん…いるのはいるけどサボってるなあ。
でも、今日は人が一段といない。
私達だけだねっ。」

クスクス笑う梨香さんだけど、
私は何が面白いのかわからない。

「暇だし、ちょっと喋ろうか。
私、桃奈と仲良くなりたい。」

“桃奈”…

今、そうやって呼んでくれてるのは家族だけ。

ありがとうございます。

私は心の中で呟いた。

素直に嬉しい。

「私も仲良くなりたいです…」
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