図書室から始まる彼女の初恋
図書室には誰も居なかった。
「梨香さん…帰っちゃったの?」
物音一つしない。
「でも鍵は開いてたよ。」
「じゃあ、
教室に荷物でも
取りに行ったのかな…?」
ところがしばらく立っても、
梨香さんは現れない。
啓と図書室で二人きりというシチュエーションに
私は異様に緊張した。
「啓はどんな本読むの?」
「あっ、これオススメだよ。」
「ああっ、やっぱりこれ…」
「桃奈。」
啓はクスクス笑って私を見ている。
「一人で喋ってるよ?」
………確かに。
私ずっと一人で喋ってた。
また啓の前で失敗しちゃった。
「そんな部分も含めて可愛いんだよ。」
また都合の良いように…
「…啓はどうして私何かを、
啓のグループに入れたの?」
ずっと前から
聞きたかったことだった。
すると啓は
私をふんわりとした雰囲気で見つめる。
「逆に聞くよ?」
…?
「人を選ぶのに理由はいるの?」
さらに啓は続けた。
「桃奈は離さない。
何かあったらすぐに助ける。」
初めて見た、
啓の真剣な表情―――
……綺麗な顔。
私も啓を見つめた。
その瞬間、絡み合う視線。
啓は椅子から立ち上がり、
立っている私の方へ回ってきた。
迫ってくる美顔。
…キスするの…?
私はぎゅっと目をつむった。