図書室から始まる彼女の初恋


―――ガラッ!

その時、
大きな音をたてて入ってきたのは燐と佳樹。

私は慌て啓を押し戻す。

……足滑った!

そう思った瞬間、
気がつけば私は
啓の上にまたがっていた。

ええええええ!?

そんなつもりじゃ…!

「桃奈、何してるの?」

「ま…まさか、
桃奈が啓を襲ったの!?」

「ち…違う!」

啓は下から表情を変えずに
私を見つめたままだ。

「早く…力抜けたの!
降ろしてっ…!」

さ…最悪だ。

何この急な出来事!

「はいはい。」

佳樹が簡単に私を抱き上げる。

…?んん?

お姫様だっこ…

「やめてよっ!」

それは違うでしょ!

「軽いね、桃奈。」

…私すぐ顔に出るのに。

赤いのバレちゃうじゃん!

「あー、もういいから!」

「佳樹たん、次俺~♪」

は?

何考えてるの!?

私をお姫様だっこしても
何もでないって!

そんなことを考えているうちに、
燐にだっこされていた。

「本当だ、軽い!」

予想外だった…
みたいな反応に腹がたつ。

そりゃ私だって、
努力してダイエットしてますからね!

元々太りにくい体質だけども!

「もういいでしょ?
降ろして!」

啓にだけはされたくない。

「次は俺。」

やっぱり…

早く降ろしてほしいのに…

燐は雑に私を啓に向かって投げる。

それを簡単に受け止めてくれた啓に、
不覚にもドキッとする私。

「―――――」

何か…言いなさいよっ。

啓は無言で私を見つめるだけ。

「燐、佳樹今から良いもの見してあげる。」

…良いもの?

啓の美顔が
私に近づいてくる。

…は?え?へ!?

私の頭は軽くパニックだ。

「目、閉じないの?」

耳元で囁かれ、
思わず身体が震える。

私は言われた通りに
目をつぶった。

鼻にかかる、
啓の甘い吐息。

私は今にも崩れ落ちそうだ。

「―――っ」

額に柔らかい感触。

その場でやはり私は崩れ落ちた。

け…啓のキス…

おでこにキス…

「桃奈。最高だよ。」

私は最高じゃない!

…でも、幸せだ。

啓と触れ合えたことが何よりも。
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