図書室から始まる彼女の初恋


―――ピンポーン

「あ!来た!
俺、行ってくる♪」

あのあと時間までトランプや喋ったりして遊んでいた。

燐は話が上手なので案外楽しかった。

部屋にぞろぞろと
入ってくる三人。

「お邪魔します。
桃奈、お母さん居ない?」

「今、仕事中だよっ。」

因みにお姉ちゃんは爆睡中…

「じゃぁはい、これ。」

佳樹に渡されたのは
箱に入ったワンホールのフルーツタルト。

「え!?買ってきてくれたの?」

「ううん、作った。」

つ…作った!?

「えええ!凄い、ありがとう!」

クオリティ高…

もちろんフルーツタルトは大好物だ。

「私、切ってくるから先に座ってて。
狭くてごめんね!」

私は一階のキッチンに向かう。

何度見てもプロ並み…

佳樹の意外な一面!

「…った…」

…って、痛っ!

ケーキ切るだけなのに手切った!

皆にバレると恥ずかしいし、
何にせよ血が止まらない…

「これ、使って良い?」

…啓っ!

啓は近くにあったティッシュを取り、
丁寧に私の血を拭き取る。

「やっぱり、こんなことだろうと思った。
消毒液とばんそうこは?」

指先に啓の手が触れている。

…ったえられない。

「傷、浅いし大丈夫!
あ…ありがとう…」

駄目だ、泣きそう。

切なすぎる。

本当は今からでも
気持ちを伝えたいのに。

「…桃奈、どうかした?」

「啓、抱きしめて…」
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