図書室から始まる彼女の初恋


「…桃奈!?」

事情を知らない燐が、
私を見て声を上げる。

「わざわざ…ごめんね。
一人じゃ帰れなくて…」

「どうしたの?」

燐が私の目を見て問い詰めるので、
私はつい逸らしてしまった。

「理由、聞いてくるなら、意地でも一人で帰るから…」

ごめんね。

心配させたくないから。

「桃奈、こっち向いて?」

「嫌…」

なぜか、
向いちゃいけないような気がする。

「お願い。」

「…嫌…」

「桃奈!」

燐が突然大声を上げ、
驚いて向いてしまった。

その一瞬の隙に燐に抱きしめられる。

啓とはまた違った、優しいぎゅう。

「……っ…」

燐から目が離せなくなり、
次第に唇が合わさる。

「燐…」

燐の優しさを感じ、
私も抱きしめる。

「…言えないんだね。」

「うん…」

「ごめんね。」

燐が悲しそうな声で言う。

燐のせいじゃない。

違うよ、燐。

「啓と比べないで。
早く、啓を忘れて。」

「大丈夫だよ…」

私はもう一度燐とキスを交わし、
家へ送ってもらった。

もちろん、
明日からは啓達とは学校に行かず、
燐と二人で行きたいことも伝えた。

燐は分かっていたかのように、
静かにうなずいた。

燐、ありがとう。

そしてごめんね。。
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