君がここに居たこと~初恋の奇跡~
そっと立ち上がって
手で空を仰いでみる。
何も掴めない、なんて
当たり前のことに
苦笑しながら、
なんとなく携帯を取り出した。
「 ・・・もしもし? 」
『 もしもし?繭? 』
降ったときのために
お母さんも私も片手には
傘を持っている。
寄りかかるように少しだけ
傘に体重をかけながら
携帯に頬擦りするようにして
そっと目を閉じた。
「 ねぇ、あき 」
『 ん? 』
「 今、お墓に居るの 」
『 ・・・お父さんの? 』
その言葉に驚きつつも
前に言ったのかな、と
小さく頷くと”そっか”と
少し悲しそうな声が返ってきた。