君がここに居たこと~初恋の奇跡~




「 あきのこと、言ってきたよ 」


『 うん・・・え? 』


「 彼氏が居ることと、
  優しい人だってことを
  お父さんに言ってきたの 」




お父さんのお墓の前に立って
そっと手を合わせて、
車へ戻る道を歩く。




お母さんはやっぱりまだ
手を合わせていて、
邪魔しないように戻ってきていた。




『 ・・・そっか、会いたかったな・・・ 』


「 うん、私も会わせたかったよ 」




小さく笑いを零せば、
受話器の向こうからも
小さな笑い声が聞こえてきて、
だらしないくらい頬が緩んでいた。




「 あのね? 」


『 うん? 』


「 あきの写真を見つけたの 」




ふと立ち止まってそう言えば
ポツポツとまた雨が降ってきて
私は傘を差した。




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