君がここに居たこと~初恋の奇跡~
「 あきには隠し事ができない 」
コートのポケットに手を突っ込んで
そう呟けば、向こうから笑い声が
聞こえて、
『 風邪なんて隠さなくても
声で一発だよ、繭 』
そう言って、再度笑われた。
そっかぁ、と重い頭で考えて
さすがに寄り道なんてする気に
なれずに真っ直ぐ家に帰った。
「 ・・・・あ 」
『 ん? 』
「 もう、11月なんだね 」
部屋に入ってすぐ、
カレンダーの数字を見て
少し頬が緩む。
11月10日。
あきに会う日まであと1ヵ月と少し。
「 ・・・あき? 」
約束の日は12月24日。
楽しみだなって緩む頬を
押えながらあきの返事が
ないことに気付いて首を傾げた。