君がここに居たこと~初恋の奇跡~
「 ・・・・・・・っ 」
やっと会えた。
不思議な1年だった。
会えもしないのに
恋人だったんだから。
だから、今初めて
全身で”香月陽斗”を感じてる。
本当に、居たんだ、と。
「 泣かないで、繭。
少し歩こうか 」
「 う、ん・・・ッ 」
「 手、出して 」
少し気合を入れてしたメイクが
落ちてしまう、と思いながらも
頬を伝う涙を片手で拭って、
言われるままに空いた手を差し出した。
「 行きたいところがあるんだ 」
暗くて表情はよく分からない。
だけど、嬉しくて、ただそれだけで
冷えた手を包み込む温かい手が優しくて
涙が止まらなかった。