君がここに居たこと~初恋の奇跡~
「 繭の記憶がないのは
俺のせいなんだよ 」
震えるその手は、さっきまで
私に触れていた温かい手では
なくなっていた。
「 俺がお願いしたんだよ、神様に。
”繭の記憶を奪って”って 」
「 ・・・どうして? 」
「 繭を酷く傷つけてしまったから 」
頭上から降ってくるその声は
間違いなく電話で聞いていた
”あき”の声だ。
だけど、どうしてだろう。
今にも泣きそうで、壊れそうに感じる。
「 今日で5年目の記念日だね。
────────それから、俺の3回忌だ 」