君がここに居たこと~初恋の奇跡~
目に見えて寂しそうな彼女に
小さく笑いを零し、手を引いた。
「 どこ行くの? 」
「 うーん・・・繭との
思い出の場所、かな 」
「 思い出の場所? 」
そんなのたくさんありすぎて
分からないよ、と苦笑する繭は
どうしようもなく可愛くて、
車で、と思っていたけど
このまま歩いて行くのも
いいだろう、とその場所に足を向けた。
人混みを抜けて、道を1本入れば
クリスマスだと忘れてしまうほど
いつも通りの暗闇が広がっていた。
「 あ、分かった! 」
暗い、と何度か行った末に
自販機を見つけた繭はそう言って
ぱっと手を離した。
「 温かいもの買って来るね 」
「 ああ、うん 」
心臓の音は大丈夫かな、なんて
女の子のような心配をしながら
ポケットの中の指輪に触れる。