君がここに居たこと~初恋の奇跡~
『 あの道が怖い? 』
「 ・・・・怖い 」
『 じゃあ、もう通らないでおこう?
無理に知ろうとしないで、
思い出そうとしないで、繭 』
”思い出さないで”
あきの掠れた声が頭の中で響いて
だけどそのときの私にあきの言う
言葉の意味を理解する力なんて
あまってなくて、”うん”と
頷いていた。
『 繭、立って。
家に帰ろう 』
一人暮らしにしては少し広い
アパートの一室。
少し歩けばいいだけなのに
どうしてだろう。
すごく遠く感じる。
『 今日はもうゆっくり休んで 』
「 ・・・・・・あき 」
『 ん? 』
「 また、電話してね? 」
重たい足を引きずるようにして
アパートに向かいながら
受話器越しに聞こえた笑い声に
ほっとしていた。