君がここに居たこと~初恋の奇跡~
受話器の向こう、きっとこの世界の
どこかに居る彼、陽斗は相変わらず
楽しそうに笑っていた。
あきは私のことをよく知っている。
誕生日も、性格も、多分・・・家も。
「 ねぇ、あき 」
『 そろそろ眠くなってきた? 』
「 ・・・・うん 」
”寝たい”と私が言いだす前に
あきは必ず先におやすみを言ってくれる。
どこかで私を見てるんじゃないか、って
たまに思うくらいにあきは私のことを
ちゃんと分かっていた。
『 おやすみ、繭 』
「 うん、おやすみ 」
切れたと同時に携帯を枕の横に
放り投げて、小さく息を吐く。
春先の気温の変化は少しだけ激しい。
・・・・だからかな、不安になる。