君がここに居たこと~初恋の奇跡~
珍しい小さな魚ばかりの
水槽がずらっと並んだそこは
暗くて、だけど所々ライトアップされていて。
「 ・・・こういう所、好き 」
夜の街を見ているような、
そんな気持ちになる。
小さな魚にとっては
こんな水槽の中もきっと
広く感じるんだろうな。
こんなに、狭いのに。
そんなことを思いながら
そっと水槽に触れて
「 ・・・・魚になりたい 」
零れた呟きに自分自身、そして
受話器の向こうのあきが吹き出した。
『 ははっ!!繭、どうしたの 』
「 別に、どうもしないよ 」
『 魚になって泳ぎたいの? 』
からかうようなあきの声に
ムッとしながらも、
自分自身、何を言ってるんだろう、と
内心ちょっと笑っていた。