君がここに居たこと~初恋の奇跡~




珍しい小さな魚ばかりの
水槽がずらっと並んだそこは
暗くて、だけど所々ライトアップされていて。




「 ・・・こういう所、好き 」




夜の街を見ているような、
そんな気持ちになる。




小さな魚にとっては
こんな水槽の中もきっと
広く感じるんだろうな。




こんなに、狭いのに。




そんなことを思いながら
そっと水槽に触れて




「 ・・・・魚になりたい 」




零れた呟きに自分自身、そして
受話器の向こうのあきが吹き出した。




『 ははっ!!繭、どうしたの 』


「 別に、どうもしないよ 」


『 魚になって泳ぎたいの? 』




からかうようなあきの声に
ムッとしながらも、
自分自身、何を言ってるんだろう、と
内心ちょっと笑っていた。




< 43 / 209 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop