君がここに居たこと~初恋の奇跡~
『 繭が行きたいって言い出して
連れて行ったら寒いって言ってさ 』
どうしようかと思った、と
苦笑交じりに話すあきに
だって本当に寒かったんだよ、と
笑って返した。
『 走れば、って俺が言ったら
本当に走り出して、躓いて転んでた 』
「 なのにあき、笑ってるだけで
助けてくれなかった! 」
『 俺だって寒かったからね 』
濡れるの嫌だよ、と笑うあきに
ムッとしながら、目を閉じて
その時のことを思い出す。
「 あの時あきはガードレールのところに
居たんだよね? 」
『 うん、車停めてたし、すぐ
乗れるように近くに居たんだよ 』
寒かったから、としつこく言われて
もう、と怒れば笑い声が頭に響いた。
あの時のあきと同じ場所にいる。
あの時のあきと同じ景色を見てる。