最初で最後の恋文
「えっ、じゃぁ、これって担任が撮ったの?」

「うそだぁ~!!」

茜の発言に皆が次々と言いたいことを言い合った。
三年D組の担任である坂下治は体育教員であり、写真に詳しい人とも思えないし、こんないい写真を撮れる人物とは想定思えない。

「じゃぁ、担任に直接聞きに行く?」

「その方がいい!!」

皆の意見が一致したことにより、六人全員で担任に直接聞きに行くことにした。
 
真琴は広げた写真を箱の中に片付けながら、フッと疑問に思ったことがあった。

「真琴?早く行こうよ!!皆、先に行っちゃったよ?」

茜はドアの前で真琴に声をかけた。

「ねぇ、茜。この写真変じゃない?」

真琴は疑問に感じたことを茜に伝えようとした。

「変?何が?真琴がいい写真って言い出したんだよ?」

「いい写真だよ。でも、この写真のどれにも佐伯君がいないんだけど…。」

「佐伯?あぁ、あのサボリ魔の佐伯遥斗?」

茜は真琴の近くまで歩いていき、写真を一枚ずつ見ていった。

「本当だ。でも、アイツって行事に出ている記憶ないんだけど…。サボリ魔だし、人と話しているところなんて見たことないけど…。」

茜は写真を元の箱に戻して言った。
真琴は茜の言葉に納得して生徒会室を茜と一緒に出た。

生徒会室を出ると、冷たい風が二人を吹きつけてきた。
茜は寒いっ!!と言った後、空を見上げながら、雪降らないかなぁ…。と呟いた。
真琴も茜と同じように空を見上げた。

グランドでは後輩が体育の授業をしていた。
真琴と茜の近くで男子がサッカーをしていて、奥では女子がソフトボールをしている。

この光景もあと少しで見れなくなる。
そう思うと、この学校で過ごす時間が確実に減ってきていることを感じた。

「雪…卒業式に降ったらいいのに。」

真琴の呟きに茜は答えず黙って、遠くを見つめていた。
多分、真琴と同じことを思っているのだろう。
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