最初で最後の恋文

Ⅲ、佐伯遥斗

騒がしい学校も放課後になると静まり返り、響いてくるのは部活動の掛け声だけだった。
その中を真琴は歩いて、教室に向かっていた。

遥斗をアルバム作りに参加させる!と宣言してから早三日が過ぎた。
この三日間、遥斗を誘うどころか一回も会っておらず、話すらしていない。
 
他のメンバーも期待をしていない分、次々と作業を進めている。
 
真琴は今日もきっと遥斗に会えないまま一日が終わるのだと思い、ため息を吐き出しながら教室のドアを開けたが、その瞬間、真琴の体は固まってしまった。

教室の中には、遥斗の姿があったからだ。

「佐伯君!!」

真琴は嬉しくなり、声を上げて遥斗の名前を言ったが、遥斗はチラッと真琴を見ると鞄の中に教科書を入れ始めた。

「ねぇ、佐伯君が撮ったんでしょ?クラスの写真!!」
 
真琴は遥斗の机に両手を置いて、遥斗を見上げながら言った。
でも、遥斗は真琴の存在を無視すかのように鞄に教科書を入れ終わると、鞄を持って真琴の横を通り過ぎた。

「ちょっと待ってよ!!」
 
真琴は遥斗の鞄を掴み、遥斗を引き止めた。
 
遥斗はゆっくりと振り返り真琴を睨んで冷たく言った。

「何?」

遥斗の冷たい言葉に真琴はムッとなったが、自分の気持ちを抑えて笑って言った。

「佐伯君も一緒にアルバム作りに参加しない?」

「ヤダ。」
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