最初で最後の恋文
真琴は何回も遥斗にどこに行くのか尋ねてみたけど、遥斗は

「黙ってついて来い!」

と言うだけで、全然答えてくれそうになかった。
そんな遥斗に少しずつ怒りがフツフツと沸いてきた頃、やっと真琴は遥斗がどこへ向かっているのかがわかった。

「佐伯君、もしかして屋上に向かっているの?」
 
真琴はスタスタと前を歩く遥斗の背中に声をかけた。
遥斗は立ち止まって振り返ると

「今頃気づいたのかよ…。」

と、ため息混じりにしゃべった。

「屋上行っても許可がないと入れないよ?」
 
この学校は毎日屋上のドアは封鎖されている。
よっぽどのときでない限り屋上に入ることはできない。
そんなこと、この学校の生徒なら誰でも知っていることだ。
当然、遥斗も知っているはず…なのに、遥斗は真琴の言葉を無視して屋上へと続く階段を一段一段昇っていく。
 
真琴はただ、その後ろ姿を追うだけだった。
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