最初で最後の恋文
真琴は遥斗の横に置いてあるカメラを持つと、遥斗に差し出した。
遥斗は真琴の行動に対して、眉間に皺を寄せると

「一緒に撮ろう。撮られるのが嫌なら、自分で撮ればいいんでしょう?」
 
真琴は遥斗に笑顔で言った。

「そういう意味じゃないんだけど…。」
 
遥斗は呆れた顔で真琴に言い、少し考えた後、真琴からカメラを取ると立ち上がった。

そして、真琴の隣に並び、カメラを向けた。

「一回だけだからな…。」
 
呆れた声でそう呟き、遥斗はシャッターを押した。
遥斗は撮り終わると、長机に散らばった写真を集めて大きい封筒に入れた。
真琴も遥斗の隣で一緒にその作業をしたが、遥斗と一緒に写真を撮ったことで胸がいっぱいだった。

封筒に写真を入れ終わると遥斗は

「あとは帰り道だけだな…。」

と窓から外の景色を見つめながら呟いた。
 
そう、あと撮る写真は帰り道だけになってしまった。
 
真琴も遥斗と同じように窓から外の景色を見つめた。
 
真琴と遥斗は明日の帰りに写真を撮ることを約束してそれぞれ帰った。
 
別に、今日撮ることはできた。
でも、何故か今日は撮りたくなかったので、真琴は遥斗に、明日にしよう。と頼んだ。

遥斗も真琴の言葉に頷いた。

真琴は帰り道、携帯を開くとさっき隠し撮りした遥斗の寝顔の画像を見て、星が輝く夜空を見上げた。
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