最初で最後の恋文

Ⅵ、帰り道

今日は写真を撮ることがないので、久しぶりに七人揃って生徒会室で作業をしている。
ちゃくちゃくと進めてきた作業は思ったよりも早く終わり、あとは最後のページを飾る帰り道の写真だけになった。

「今日は早いけど解散にすっか?」
 
皆の作業の出来具合を見計らって大輝が話しかけた。

「そうだね。」

「あとは真琴たちが帰り道の写真を撮って、明日最後の仕上げをしたら終わりだな。」
 
このメンバーで過ごす時間も明日だけになってしまった。
たった一ヶ月間のことだったけど、とてもとても長く皆と過ごしてきた気分だった。
 
真琴が帰り支度をしていると、遥斗が

「宮崎、悪いけど…担任に呼ばれているから、帰るのちょっと待ってて。」
 
と言ってきたので、真琴はそれに頷くと帰り支度をやめて、遥斗が帰ってくるまで静まり返った生徒会室で待つことにした。
 
生徒会室から窓の外を眺めると、葉がなくなった寒そうな木々を風が揺らしていた。
 
真琴は今日の朝、天気予報で“今年に入って一番の冷え込みになるでしょう”と言っていたのを思い出していた。

「雪…降らないかなぁ。」
 
真琴は生徒会室から薄暗くなってきた空を見上げて呟いた。
 
真琴の住む街は比較的に雪が降るのは珍しい地方で、生まれたときからこの街で暮らしている真琴は冬になると雪が降らないかと、この歳になっても期待を膨らましていた。
 
そして、今日の天気予報の中で“今日は珍しく雪が降るかもしれませんね”という会話があったので、今朝から期待をしていた。
でも、実際は雪が降る気配はなく、外はただ冷たい風が吹いているだけだった。
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