最初で最後の恋文
「ねぇねぇ、佐伯君。ブランコだよ。懐かしい!!」
 
真琴は入るなり、小さい頃を思い出してはしゃいでいた。
そんな真琴を呆れた顔で見ていた遥斗は公園内を撮り始めた。
 
この公園には遊具はブランコ、滑り台、シーソーの三つだけで、ベンチが二つあるだけの小さな公園だった。
遥斗は公園内を一通りカメラに収めると、まだはしゃいでいる真琴にカメラを向けた。

真琴は遥斗に撮られていることも知らずにブランコを漕いでいる。

「いつまで遊んでいるの?」
 
真琴は遥斗の声に気づき、いつの間にか楽しんでいた自分に気づいた。

「ごめん。つい、懐かしくて…。」
 
少し恥ずかしそうに遥斗に言うと、遥斗は呆れた顔をして言った。

「今時珍しいな、公園でそんなにはしゃぐ奴。最近の子供でもそんなにはしゃがねぇだろ。」

「だって、…。」
 
真琴が少し口を尖らせながら呟くと遥斗がケラケラと笑い出した。

「何で笑うの?」
 
真琴は遥斗を睨みながら言うが、遥斗はそんな真琴を見てさらに笑い声を上げた。
ますます真琴は不機嫌になっていく。

「悪い。本当、お前って面白いなぁ。」
 
遥斗は笑い終わると不貞腐れている真琴を見ながら言い、空を見上げた。
真琴も遥斗と同じように空を見上げると、空から白い雪が舞い降りてきた。
< 37 / 62 >

この作品をシェア

pagetop