最初で最後の恋文
「雪だぁ…。」
 
真琴は雪を見ながら声を上げた。
今年初めての雪は真琴と遥斗を包みながら静かに舞い降りていく。
遥斗は雪に向かって何枚もシャッターを切り、真琴は隣で遥斗が撮っている姿を眺めていた。

「…この一ヶ月楽しかった。」
 
雪にカメラを向けていた遥斗が静かに口を開いた。
真琴は黙って遥斗の横顔を見ていた。
遥斗は腕を下ろし雪を撮るのをやめたが、顔は上げたまま話し続けた。

「友達とかそういうの鬱陶しかった。思い出とかないほうがいいと思っていた。あとで辛くなるのは俺だから…。」
 
遥斗は寂しそうな目をしたまま話していた。
何で遥斗がそう思うかは真琴にはわからなかった。
卒業するのは寂しいけど、一生の別れではないし、これからも連絡を取り合えば辛くなることもない。
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