最初で最後の恋文
次の日、真琴は茜と一緒に遥斗の家に訪れた。
真琴たちが訪れたときには、香里も大輝も達也も奈々子も来ていて、クラスの人たちもいた。
真琴たちの姿に気づいた香里はゆっくり真琴に歩み寄った。

「真琴…。」
 
香里はその後何も言えなかった。
大丈夫?なんて真琴の顔を見たら大丈夫じゃないことぐらいわかるからだ。
そのまま、真琴は香里、茜、大輝、竜也、奈々子と言葉を交わさないまま遥斗の葬儀が始まった。

遺影には、遥斗の無愛想な顔があった。
 
今、遥斗の葬儀が始まっているのに真琴の頭の中は真っ白だった。
夢の中にいるみたいで何も考えることができなかった。
 
葬儀が終わると、大輝が真琴の傍に来て言った。

「アイツ、昔から体が弱かったんだって。もう、自分が長くないこと知ってたんだって。…俺、…何もしてやれなかった…アイツ…一人で…ずっ…ずっと抱えていたんだ…なのに…俺、…俺…。」
 
大輝は震えながら必死に涙に耐えて話してくれた。
すると、目を真っ赤にした担任が真琴たちのところに来て言った。

「佐伯、楽しかったって言ってたぞ。お前らとアルバム作りできて。佐伯は小さい頃に医者から自分の体は長く生きられないって言われていたそうだ。だから、俺は佐伯に何も出来なかった。佐伯にとっては高校生活なんて辛いだけになると思ったからだ。でも、間違っていたのかもしれねぇ。最近の佐伯の顔は凄く楽しそうで、俺も見たことのない顔をしていた。初めてだよ、佐伯のあんな楽しそうな顔を見たのは…佐伯の親もお前らに感謝しているって言ってたぞ。」
 
担任はそれだけ言うと、遥斗の両親にあいさつするために去ってしまった。
茜も香里も大輝も達也も奈々子も担任の言葉に涙を流した。
その中で真琴だけは立ったまま涙が出てこなかった。
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