最初で最後の恋文
真琴は必死に溢れ零れそうになる涙を止めて最後まで遥斗の手紙を一語一語丁寧に読んでいった。
読み終わると、隣で茜が真琴の手を強く握っていることに気がついた。
真琴は茜の顔を見ると今まで我慢していた涙を零して茜に抱きついた。

「…茜ぇっ…。…っ会いたいよぉ。手紙じゃなく…ちょっ、直接聞きたかったぁ…。」
 
茜は自分の胸の中で大泣きしている真琴を必死で抱きしめていた。

 
真琴が泣き終わると香里は真琴にA4の茶封筒とフィルムを渡した。

「生徒会室を片付けていたら、このフィルムが出てきたの。悪いと思ったけど、勝手に現像させてもらったわ。そしたら、…。」
 
そこまで香里は言うとA4の茶封筒を逆さにした。
すると、茶封筒の中からはたくさんの写真が出てきて、その全てが真琴の顔で埋め尽くされていた。

「こんなにも真琴は佐伯君に想われていたのね。」
 
真琴は目の前にある自分の写真を手に取り眺めた。
遥斗が撮った真琴はどれもこの一ヶ月間のものだった。
真琴の笑っている姿、居眠りしている姿、一人ではしゃいでいる姿、、、どれも楽しそうに穏やかに写っていた。
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