緑の君~白い影~Ⅱ
涙が流れ出す。
何故だかとても寂しかった。
モヤモヤして…。






体も…。重い。





キスが降りてきて…。
「緑の君…。」






数珠が淡く光を放つ。
「?!」





暗闇に…。金色の二つの光。
それに、ろうそくの小さな光。





「ここ…。」






「さすがスーリア…。でもあのままの方が楽だった…。」





「っ!」
体に蔦が巻き付いて動けない。





「レン君…。やめて…。」






袴の中に侵入してくる蔦が気持ち悪い。






「あっ…。」
首元にまとわりつく…。




急に顔つきが変わる。
「邪魔な奴が来た。君は渡さない。スーリア…。」





藤の香りが辺りに拡がる。





「まだ動けたか…。」
舌打ちすると消えていく。





もがけば乱れていく袴…。





だんだん意識が朦朧としてくる。





ほどこうにも巻き付いて動けない。
身動ぎさえ許さない蔦が肌を這っていく。






声にならない悲鳴を上げる。





ろうそくだけが不気味に小さくチロチロと火を揺らしていた。





薄暗い中、叫ぶ。






「緑の君!」






開け放たれた古びた御堂に風でろうそくの炎が揺れた。





蔦が動いて、そのまま外に出される。
灯りはなくて、灯籠の下まで運ばれる。





「彼奴はダメだよ。蜘蛛の一族に録なやつはいない。」





「一族?…。」





「僕らの一族とアキラの一族は…。仲が悪くてね…。」






額に触れ…。
「夢の続きと行こうか。」





「止めて…。」






誰か!






「僕の結界内だ。あきらめるんだ。スーリア…。アキラは止めた方がいい。君の力は…。」






また朦朧としてくる。





お願い…。夢は嫌…。






抗うにも灯籠はびくともしない。





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