緑の君~白い影~Ⅱ
「私はレン…。雨宮レン。」





「雨宮君。」





「レンでいい…。」





「レン君はここで何してたの?」





「スーリア…。」
手を握りしめられる。





「昔…。君に似た人がいたんだ。」
悲しげにいいながら…。真っ白い歯を見せて、屈託のない笑顔。





それは反則です…。
ちょっぴりときめいてしまった。





やっぱしこの人も日向の人だ…。





笑顔が眩しいよ。





蝉の声が聞こえた。
「あの…。レン君、放して。」





黒い瞳は真っ直ぐ。でもなんだか金色にも見える…。





「スーリア…。」




顔が近くに…。
身を引こうにも手を握りしめられる。





突風が吹いて…。
砂が巻き上がった。
手が離れ私は…何も言わずに走り出す。





黒い瞳は金色に変わる。
「邪魔が入ったな。暗示がかからない…。」






風は止んでいた。






藤棚にいつの間にか来ていた。





「私…。」





上から葉っぱが落ちてくる。そんなのどうでもよかった。





だから上から落ちてくるなんて思わなかった。





「彼奴に近づくな。」





逢いたい人は直ぐ近くにいるのに私は気づかない。




だから無理矢理キスが降りてきても驚きが先で…。
言えなかったの…。
怖かった。側にいて…。




されるがままに緑の君…。





「彼奴はダメだ。」





さするように包んでくれるのがうれしかった。





「緑の君…。私。」






クス…。
「わかってるよ。さゆりは優しいから…。」





「!」





小さな向日葵が一輪。





そして、耳元に囁いた。
「さゆりは俺のだからな。」





顔が火照り向日葵を握りしめた。





風が吹いた。





また…。居なくなっちゃった。





「きっ…。きざなんだから…。」





似合いすぎ…。





やっぱり花束見てたのかな?






気分が良くないけど暑いからかな…。





向日葵…。
「ありがとう…。」






たぶん何処かにいるだろうから。そっと口にした。





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