とある真夏の物語【完】
『そうかな…?ありがとう…』
ちょっと照れ臭いが、やはり誉めてもらうのは素直に嬉しい。
…たとえお世辞だとしても…。
『では、髪をとかします、こちらへお座りください』
今度は、鏡の前にある椅子に座るように言われ、私は、ポスンと歩きにくいドレスのまま遠慮がちに椅子に腰をかけた。
『ねー、リーンちゃんは、年いくつなの?』
『私は、今年で15歳になります』
そう言って、柔らかい笑みを見せるリーン。
『じゃあ、私と同い年だ!同い年なんだし、そんな敬語使わなくていいよ、私のことは、まなつって呼んで?』
『いや、ですが…』
少し慌てたような様子のリーンに、私は、にっこりと微笑みかえす。
リーンも私のその表情に安心したのか、
『ま、ま、まなつ……ちゃん』
おそるおそるではあるが、はっきりとそう呼んでくれた。