とある真夏の物語【完】
『着いたよ』
冬樹くんの言葉に私は、はっと顔をあげる。
『…変わってないね…』
本当に昔のまま。
陽子さんの趣味で植えられた花壇の花も昔と変わらず、咲き誇っていた。
『あら?冬樹くんじゃない!?』
ピクッ
『お久しぶりです、陽子さん』
突然、後ろからした懐かしい声に柄にもなく泣きそうになってしまった。
『あら?あら?何!もしかして…冬樹くんの彼女さん?』
ニコニコと微笑む陽子さんの顔を私は正面から見ることができない。
そうだよね…あれから5年もたってるし…覚えてるわけないよね…
『………もしかして………真夏ちゃん…なの?』