とある真夏の物語【完】
『真夏ちゃん…どうかした?』
不思議そうな陽子おばさんの声に私は、我にかえった。
『い、いえ…何でもないんです…あ、おばさん、私、一回家に戻ります!お母さんにも黙って来ちゃったし…明日も来ますね…』
私は、それだけ告げると走りだしていた。
『真夏ちゃん!?』
『真夏!!?』
後ろから冬樹くんと陽子おばさんの声が聞こえたが、私は立ち止まらなかった。
だって…確かに聞こえたんだ…。
私を『まなつ』って呼ぶ声が。
『まなつ』
私をそう読んでいたのは1人しかいないんだ。
『祥ちゃん…』