とある真夏の物語【完】
そう思った瞬間、じわりと涙が目に浮かぶ。
…な、泣いちゃダメだ…
『…っ…』
頭ではそう思うのに、なぜだか涙が止まらない。
後から後から流れてくる滴を私は、ただ拭うことしか出来なかった。
『…シュカ…下がれ』
リュウは、そんな私を数分間見つめた後、シュカさんにそう言い放つ。
『かしこまりました』
ニコッとかわいらしい笑顔で微笑むとシュカさんは、部屋から出ていってしまった。
ただでさえ広い大広間に私とリュウだけが取り残される。
『…泣くなよ』
困り果てたように私に近づいてきたリュウは、私の涙をそっと指で拭う。
ドクン
その瞬間、リュウのそのさりげない仕草が誰かに重なって見えた。