とある真夏の物語【完】
『…だ、大丈夫…ありがとね…』
意外にもリュウの顔が近くて、私は、少し後ずさった。
『…真夏が話せるようになったら話せよ?どんな話でも聞いてやるからさ』
ドキン
リュウの一言に胸が高鳴る。
『…わかった…ちゃんと…話せるようになったら話すね…』
少し顔を伏せながら私は呟いた。
…ありがとう
心の中でそう思いながら。
私の言葉に、機嫌をよくしたらしいリュウは、にこやかな笑顔を浮かべながら私を見つめた。
『…で、真夏は、これからどうする?…オレ的には、居たいだけ居てもらっても構わない、オレの城だしな』
そんな優しいリュウの提案に私は、素直に頷いた。
『帰り道が見つかるまで…よろしくお願いします』
そう頭を下げながら。