とある真夏の物語【完】
『気にすんな』
そう言って、リュウは、私の頭を軽く撫でる。
…それにしても…リュウは、何でここまで赤の他人である私に優しくしてくれるのだろう…
私の中でふと…そんな疑問が浮かんだ。
『リュウは…どうして、私にこんなに親切にしてくれるの…?会ってまだ数時間なのに…』
『…オレさ…実は、小さい頃の記憶ないんだよ、オレは…実際、この国の出身なのかもわからない…』
少し俯きがちなリュウの横顔は、すごく寂しそうに見えた。
『……』
『で、子どもがいなかった、オレの両親…がオレを跡継ぎにするために引き取ったんだ……』
…リュウにそんな事情があったなんて思いもしなかった。
『だからかな…真夏がさ、昔のオレと少しかぶるんだよな……知らない場所に急に来た不安とかがさ…それに……』
そこまで言うと、リュウは、ちらりと私を見つめた。
…?
『なんか…真夏といると…懐かしい気持ちになるんだよな……初対面なのにさ』