とある真夏の物語【完】
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『しっかり、捕まっとけよ』
『待ってよ、祥ちゃん…』
私は、怯えながらもしっかりと祥ちゃんの手を握りしめる。
もう既に半泣き状態だった。
『…し、祥ちゃん…もういいでしょ?そろそろ帰んないと…』
『大丈夫だって、そうだ!まなつ、ついでにこの森の蝉採り行こうぜ!?』
私は、ぎょっとしてブンブンと首を横にふる。
さすがにこれ以上森の奥には行きたくなかった。
だけど…祥ちゃんは、
『じゃあさ、オレが採ってくるから、まなつはここで待っとけよ!』
ニカニカ、楽しそうに笑いながらそう言った。
『あ、危ないよ?』
『だから、大丈夫だって!すぐ戻ってくるからさ!』
それが、祥ちゃんと交わした最後の言葉。
いつまで待っても森の奥から戻ってこなかったんだ。
祥ちゃんは、それから未だに行方不明。